
京都水族館
海獣チーム
オットセイ等担当
山本 渚

京都水族館
海獣チーム
イルカ等担当
神尾 高志

すみだ水族館
魚類チーム
チンアナゴ等担当
柿崎 智広
すみだ水族館・京都水族館の飼育スタッフたちが、
3月、都内某所で顔を合わせた。
お互いに初対面、共通点はひとつ
「ナマコを愛している」こと。
ただし、推したいナマコは、
ふたつの水族館で少し違う。
1時間を超える、探り愛、ぶつかり愛、
そしてわかり愛。
世にも珍しいナマコについてだけを語る
灼熱対談、
スタートです。
すみだ水族館
柿崎(以下柿崎)
すみだ水族館の柿崎です。はじめまして。
京都水族館
山本(以下山本)
京都水族館の山本と申します。
京都水族館
神尾(以下神尾)
京都水族館の神尾です。よろしくお願いします。
柿崎
すみだ水族館に入って6年半、くらいです。その前は沖縄に住んでいました。今日はナマコの対談なんですけど、まあ、ナマコも結構触ってきたので。よろしくお願いします。
神尾
あ、よろしくお願いします。私は京都水族館に入ってからは、まだ1年経ってないんですけども、その前に8年間、パラオ共和国という所に住んでいまして。そこでエコツアーガイドもやってたんですが、そのときナマコもよく紹介していました。
山本
私は入社3年目です。私がナマコと知り合ったきっかけは、
神尾
ナマコと知り合った?
山本
はい。専門学校のときに体験プログラムの実習があって、お客さんに対してナマコを説明するために勉強したのがきっかけです。皆さんとは比べものにならないぐらいのペーペーなんですが。
柿崎
そうなんですね、結構、ナマコを見てきたぞ感がありますね。
山本
私は、ザ・一般的な知識の中で頑張ってお話ししようと思ってます。

柿崎
実はですね、ナマコを普段から見てはいるんですけど、超おもしろいなーと思ったきっかけがあって、小笠原でめちゃくちゃナマコ好きな人に会いまして、ナマコの24時間映像とか見せてくれたんですよ。(笑)
山本
へー。
柿崎
人間のペースでナマコを見てるとですね、動いてないなというか、ゆっくりした生活してるじゃないですか。もちろん、生きてるスピードが違うんで。でも映像で見ると、めーちゃくちゃ動くんですよ。ほんとイモムシ並みにニョキニョキ、ニョキニョキ…、ニョキニョキって。それで、あー、生きてるなあと。ちゃんと生きてるんだなみたいなのが実感できて。ほかの哺乳類とかと比べても、「あー、動物だな」って感じることができたんですよね。他にも尻の穴とかも見せてくれたりしたんですけど。たまに水、ボーンと吹き出すんですよね。
山本
ねっ。(笑)
神尾
はいはい。
柿崎
なんか、ちゃんとそうやって、じっくり見せてくれる人がいると、こんなにおもしろいんだなと。僕、そこで感動しました。それでナマコ、もうちょっと見てみようかなと思って。
神尾
今、言われていたみたいに、横の動きもそうなんですけど、結構縦にも動くんですよね。
山本
うんうん、のぼりますもんね。
柿崎
そうですよね。のぼるのも、別にのぼろうと思ってないんですよね。
神尾
そうですね。結果的にのぼってたという。
柿崎
たまに、うちの水槽でも、岩からぶら下がっていたりするんですよ。
山本
へえー!可愛いー。
柿崎
あいつは何をしに、あそこに行ったんだろうって。
神尾
砂だけじゃなくて、結局、何かの有機物を食べるわけじゃないですか。なので、有機物がついてる網ものぼるんですよね。パラオに住んでいる頃、海中の網のチェックをしていると、深さ10メートルぐらいあるのに水面からちょっと下ぐらいまで来ていたりすることもあって。
ニセクロナマコだけじゃなくって、オオイカリナマコっていうのもいて、何かこう、ビトーッとくっついてるんですよ。
柿崎
オオイカリはね、排水溝に詰まりやすいんですよ。
神尾
あー、デカいし、あまり硬くないですもんね。
柿崎
痛いじゃないですか、触って。
神尾
うんうん。本当に痛い。
柿崎
オオイカリはね、詰まるんですよ。
神尾
詰まるんですよね。
柿崎
昔、沖縄の水族館にいた時に飼ってたことがあって、よく詰まるなと。
山本
たまたま詰まるんですか?
柿崎
たまたまなのか、そこばっかり行っちゃって、詰まって、「あ、水、溢れそうになってる」とかって結構ありましたね。オオイカリは苦い思い出です。
山本
苦い思い出。
柿崎
苦いナマコですね、あれは。

柿崎
クロナマコって、何か、文字っぽいんです。
神尾
わからんでもない。
柿崎
ほかのナマコって、すごいカラフルとか、さっきのオオイカリじゃないですけど、すげー長いとか、何か特徴があるじゃないですか。クロナマコは、文字っぽい。
山本
「つ」とか、そういうことですよね。
神尾
うんうん。
柿崎
そうそう…。縦に入ったら、あいつ、「I(アイ)」だなみたいな感じ…。
神尾
ひらがなじゃなくて?
山本
私もひらがなかと思った。
柿崎
いや、なんか、向き変えると「あ、何か文字変わったぞ」みたいな。形を変えると違う文字になるよみたいな。
神尾
あー。
柿崎
カラフルだと、どうしても色を見ちゃうんですけど。ましてや、あいつら、白いサンゴ礁とかに住んでるじゃないですか、砂浜の、何か海の文字みたいに。
山本
オシャレ。
神尾
それで言うと、ニセクロナマコってどうなるんですかね?文字に見えると言われれば、見える気がしなくもないんですけど。ただ、あれですよね。後ろのほうが、ちょっと太いじゃないですか。
柿崎
うん。
神尾
なので、あんまり綺麗な文字にならないかもしれないです。
柿崎
クロナマコね、円筒形なんですよ。だからこう、グニャッと曲がると、うまいボールペン字みたいな。
神尾
ニセクロナマコは口のほうが細くて、後ろのほうはビョーンってなってるから…。
柿崎
ニセクロナマコはイボ足とかも、こう、突起が結構長いじゃないですか。
神尾
ありますね、はいはい…。
柿崎
なので、若干…、まあ、あまり言っちゃあれなんですけど、
ちょっと雑といいますか…。
山本
やばい、ディスられた。
神尾
あー、まあ、分からんでもないです、確かに、はい。
柿崎
クロナマコのほうが若干スタイルがいいというか。スタイリッシュ。
山本
あー、そうですね。
神尾
でも、そんなにスタイリッシュなのになんで砂かぶっちゃうんですか?
柿崎
隠れてるんじゃないのかな?
神尾
いや、隠れられてない。
柿崎
いや、あのー、やさしいんですよ、彼らは、たぶん。
山本
やさしい?
神尾
ほうほう…。
柿崎
武器を持たないナマコじゃないですか。
神尾
あー、そうですね。
山本
うんうん。
柿崎
クロナマコ科の仲間って、キュビエ器官という武器を持つ仲間が多いんですけど、クロナマコって、防御しか手段がないんですよ。
神尾
確かに。
柿崎
固まって防御するしかないんですよ。攻撃されると固くなるっていう。そういう意味で言うと、やっぱり、相手を攻撃しないやさしいやつなんですよ、たぶん。
神尾
そこへいくとニセクロナマコは、ちょっと攻撃しますね。
山本
そうですね、ちょっとパワフルですね。
神尾
一応、毒もある。
山本
食べたことありますか?
柿崎
食べたことないですね、はい。
神尾
ニセクロナマコを食べようとは思わないよね。
山本
思わないですね。
柿崎
可愛い生き物は食べないって決めてるんですよ。
神尾
美味しければ食べます。
柿崎
まぁ僕も食べますけど。海ヘ出ていくと、砂浜走ってるカニとか捕まえて食べますよ。
神尾
あー、まじですか。それ、大丈夫?…

神尾
でも、あれですよね。ニセクロナマコのほうが防衛機能は高い気がするんですよ。まず、キュビエ器官、あるじゃないですか。
柿崎
うん。
神尾
で、弱いけど毒がある。だから、ちゃんと自分の身を守ってる感じがするなって。
柿崎
でも、ニセクロナマコは柔らかいんですよ。
山本
・・・そうですね、触った感じは。
神尾
確かに柔らかい、うん。
柿崎
めちゃくちゃ柔らかいんですよ。だから、たぶん、どう猛な敵に当たったら、ちぎられやすいかなと。
神尾
ちぎられたら、また増えるじゃないですか。
柿崎
当たり所が悪いと、死ぬ、そのまま…。
神尾
ああ、まあ、当たり所が悪いとね、まあ、そうですね、確かにね、うーん。
柿崎
クロナマコは、柔らかいは柔らかいんですけど、触った感じ、ちょっと厚みがあるような感じで。
神尾
いや、でも場合によったらあれですよ。パチモンのほうが、ちょっと、おもしろかったりするじゃないですか。
柿崎
うん、はい?
山本
響いてない。
神尾
ニセクロナマコのほうがクロナマコより、しっかり黒いよねっていうことを前に話したことがあったんですよ、砂かぶってないぶんだけ。
プラス、キュビエ器官があって、毒があるっていうことで、防御力がちょっと高い気がする。
生物界の中で、どっちかがどっちかを真似していると仮定した時に、クロナマコのほうが得してるんじゃないかと思って。
柿崎
ああ、なるほど。
神尾
クロナマコを見て「あ、こいつ、ニセクロナマコだ、じゃあ食ーべない」と間違う魚がいるとするじゃないですか。そう考えると、実はニセクロナマコをクロナマコが真似てるんじゃなかろうかなっていうことをね、ふと思ったんです。
柿崎
まあ、真似るまでもなかったんでしょうね、クロナマコは、たぶん。
山本
うお、うおーっ。
神尾
うわ。
柿崎
真似るまでもなく、別に攻撃されてもいいよみたいな勢いで生きてきたんじゃないかなと。
山本
やさしいんですかね。
神尾
やさしいんですか。
柿崎
とりあえず岩の間に挟まっておきゃいいんじゃないのと。それで今、種が繁栄してるっていうことは、別に攻撃手段が必要じゃなかったということですから。
神尾
その攻撃手段が、そもそも役に立っているのかっていう話もありますよね。
柿崎
カニとかに攻撃されて、キュビエ器官を吐き出して驚いたカニが去っていくとかっていうのは別に構わないんです。だけど、復活するまで半月ぐらいかかるじゃないですか。
神尾
そうですね。
柿崎
復活するまで15、6日かかかるわけだから、カニに1回、ワーッて攻撃されて、そのあと横からまたカニが出てきてたら、食われますよね。
神尾
うん。えっ?
柿崎
だから、キュビエ器官は、攻撃手段としてはあんまり醸成されていないものじゃないかなと思います。一発屋みたいな。
神尾
一発ぐらいは守りましょうよ。
山本
じゃあもし攻撃されても、クロナマコはじっとしてるだけっていうことですよね?
柿崎
じっとしてて、もうそろそろやめたら?みたいな。
山本
いらんやん、みたいな。
柿崎
もういいんじゃない?って。
神尾
ガンジーみたいな。
山本
ガンジー…。
柿崎
そんな攻撃する前に、まず身を守ろうと。やさしい世界をつくろうよと、クロナマコは思ったんですよ。
神尾
いや、世界はやさしいかって言われると、そういうもんでもないじゃないですか。一応、防衛機能ぐらいはあったほうがいいかなと思うんですよね。戦わなきゃいけないときってあると思うんです。
山本
そうですね、戦って自分を守らなきゃいけないときもある。

山本
まあ、メジャー度というか、ナマコらしいのは、クロナマコかもですね。
神尾
申し訳ないですけど、クロナマコですね。
柿崎
勝ちました!
一同(笑)
神尾
まあ、まあね。
山本
名前でナマコっぽいのは、クロナマコでしょう。
神尾
ニセクロナマコはせっかくキュビエ器官あるのに、そもそも知らない人いるんですよね。
柿崎
あー、知らない人いますよ。
神尾
キュビエ器官を知らない人いるって思ってなかったので、ニセクロナマコはちょっと分(ぶ)が悪いかなと思ったんです。ナマコっていったら、キュビエ器官なのに。
山本
うん、そういうイメージがリンクしてますよね。
神尾
だから、ニセクロナマコのほうが皆さんの思う「あ、ナマコですね」っていう感じになるのかと思ってたんです。でもキュビエ器官を分からない方に、それを言っても響かないですし、毒もありますって言っても、毒がないナマコのほうが多い。
柿崎
うん。
神尾
だからニセクロナマコのほうがメジャー感あるというのは、なかなか言いづらい状態になってるんです。
柿崎
あー、でも、地域性があると思います。南のほうに行けば行くほど、メジャー感があるのはニセクロナマコなんですよ。ナマコの認識度って地域性かなと思います。南のほうに住んでいる人間からすると、ナマコらしいナマコって、ニセクロナマコとかのほうがイメージが湧くかもしれないですね。
神尾
ありがたいです、ありがたい。
柿崎
いやー、ほんとに、そう思います。地域性。
神尾
ちょっとニセクロナマコのセールスポイントが出なかったのでありがたい。

山本
ニセクロナマコって、目線を合わせて、ずーっと口の動きを見たら、すごく時間が経っているときがありません?
神尾
あります。口が一番動きますからね。
山本
そうですよね。で、口の動きばっかりに集中していたら、ウンチが出ているのを気付かなかったりするんですよね。
神尾
で、ウンチ見るために、もう1回、そっちを見ていたら、時間かかりますよね。
山本
ね、何か、ほーみたいな、あらま、こっちも動いてるって、ずーっとひとりで。
神尾
あと、移動ですよね。やっぱり、動くじゃないですか。それをずーっと、こう、見てると面白い。
柿崎
うんうん。
神尾
この感じで写真撮って欲しいんですね。
山本
ちょっと気持ち悪いですけどね。
神尾
うん、それがいいじゃないですか。あと触手の真ん中に、穴があるんですよ。この穴も全部含めて、バカッとなったところをうまいこと撮ろうと思うと、結構時間がかかるんで。
柿崎
ああ、かかるかもしれないですね。
神尾
あと、ウンチ出なくて、水だけ出るときがあるじゃないですか。
柿崎
水、吐き出しますね。
神尾
あれが面白いですね。
山本
うん、びっくりしますよ、ぼーっと見てたら。
柿崎
あれは、吸って吸ってを繰り返すんですよ、彼らは呼吸のために、海水を取り入れるじゃないですか。ケツの穴っていうのが、ケツでいいですか?
山本
大丈夫です。
柿崎
お尻。
神尾
肛門。
柿崎
肛門。お尻がですね。
神尾
ケツにしましょうか。
柿崎
お尻の穴が、こう、開いたり閉じたり、ちゃーんと、吸い込んで吸い込んでって繰り返して。で、吸い込みきったら、バッと出すんですよね、バフォーと。それを繰り返すんです。お尻から水を入れて、こう、海水の入れ替えですね。
神尾
ポーンと出す。
柿崎
水を出す瞬間も気持ちいいんですけど、水槽に潜って掃除するときに、やたら、お尻の穴を動かすじゃないですか。
神尾
動かしますね、うん。
柿崎
うん。なので潜水作業のときに、お尻にちょっと、砂を乗っけてたんですよ。
神尾
ああ、やってたんですか。はいはい。
柿崎
お尻、これ、海水を出す瞬間に、ボッと、自分の方向に砂が飛んでいくんじゃないかなって。で、砂乗っけてたら、たまにバッと出てくるんですよね。
神尾
はいはい。それは、なかなか。
山本
楽しいですか?
柿崎
そうですね。
神尾
うん、気持ちは分かる気がする。

神尾
京都水族館では、チンアナゴがたくさんいる所にニセクロナマコがいるんですよ。でも、完全に脇役扱いされてるんです。
山本
邪魔なんですよ、ねえ。
神尾
え?どっちが?
山本
ニセクロナマコが。みんなチンアナゴを見てるのに、こうやって壁をこうのぼってたり、いや、お前邪魔だろうと。そういうところも可愛かったりして(笑)。それ、分かりません?
神尾
それはフォローしてる?
山本
フォローしてる。なんか、あー目立ちたいんだなって。
神尾
前、写真撮ったときに、ニセクロナマコが前にいて、後ろのほうにチンアナゴがいたんですよ。ちょっとチンアナゴがボヤけてるぐらいの感じに撮れたときが、いい写真が撮れたなと思って。
柿崎
ああ、なるほど。
神尾
このね、後ろでチンアナゴがちょっとボヤけた感じで見えると、これは面白いじゃんっていう。
柿崎
なるほど。チンアナゴって、言ってしまえば主役級ですよね。
山本
うん、メジャーですよね。
柿崎
その主役級の所にいたほうが、こいつら、なんでチンアナゴの横にいられるの?みたいな。
神尾
名脇役みたいな感じで。
柿崎
そうそう…。チンアナゴ水槽って、他の生き物を入れると、やっぱりちょっと飼いづらくなるじゃないですか。チンアナゴたちも、出て来るきっかけもだいぶ少なくなってきちゃう。
山本
そうですね。
柿崎
そんな中、ナマコ様はですよ。
神尾
様。
山本
様。
柿崎
チンアナゴの横にいられるんですよ。
神尾
横におられるんですね。
柿崎
スターの横に。
神尾
横に。
柿崎
そんな生き物、そうそういませんよね。
神尾
いませんよ。
柿崎
だから、壁をのぼってらっしゃっても、別にかまわないんです。
山本
らっしゃる。
神尾
らっしゃる。
柿崎
でも、すごいなと思うのは、そういう所に入ったほうが、聞かれるんですよね、これ何ですかって。
神尾
はいはい。
柿崎
だから、セット商品になるみたいな。
神尾
抱き合わせみたいな。
柿崎
ナマコさんが、抱き合わせになる。
神尾
すごいですね。私、すみだ水族館のナマコのいる水槽が大好きなんですよ。
柿崎
ああ、サンゴの。
神尾
そう、あのサンゴの感じも。
山本
うん。
神尾
なんかちょっと懐かしいというか。この感じ、いいなあっていう。
柿崎
あー、確かに。うん。

柿崎
ナマコが急に向きを変える瞬間って、よくないですか?僕、好きなんですよ。
神尾
あー、分かります、それ、すごいよく分かる。
柿崎
なんで?と思って。
山本
何があった?っていう。
柿崎
モニョモニョは、ゆっくりじゃないですか。ゆっくりはってるけど、いきなり向き変えるときって、すごい勢いで変えるので、おーおー、どうしたってなるでしょう。だから、その瞬間を探すのって、結構好きです。
神尾
結構レアじゃないです?
山本
結構ね。
神尾
「何があったの、今?」っていう。岩には気付かずに、そのままのぼっちゃうぐらいなのに。平地でありますもんね、これね。
柿崎
岩にのぼるときとかだったら分かるんですけど、砂の上ではってるときに、なんで急にこっち行こうとしたみたいな。
神尾
うんうん…。
柿崎
その瞬間がね、すごくいいです。形が変わるって。
神尾
形が変わる。
柿崎
いつも、こう、I(アイ)じゃないですか。
山本
うんうん。I、I。
神尾
Iですね、はい、Iですわ。
柿崎
Iじゃないですか。そういう感じでね、いきなり、こう、L(エル)になるみたいな。
神尾
U(ユー)にもなるし。
山本
Gにもなる。
柿崎
そう、なんか、その角度、なんでそうなったのみたいな。ただ寝そべってるだけじゃないんだと。
神尾
そうですね。ちゃんと生きてる。
山本
動いてる。
柿崎
そうそう…、生きてるなと。
神尾
私はやっぱり、水質をきれいにするっていう、結果的にはそこにフォーカスされるのがナマコ冥利に尽きるのかなと思うんですよ。
山本
はいはい。
神尾
サンゴ礁って、海の中の0.2%ぐらいしかなく、そこに海の生物の25%が住んでいると言われている。そのサンゴが生きているということは、透明度が高くなきゃいけない。
柿崎
うん。
神尾
魚がたくさん集中しているところでも、ウンチをした先できれいな状態に戻してくれるナマコがいるお陰で、海の中の生態系ですごく重要なサンゴ礁というものが出来上がっている。というところに思いをはせながらナマコを見るというのが好きです。
山本
奥深いですね。
柿崎
いや、確かに分かりますよ。
神尾
ですよね、ですよね。
柿崎
ナマコも魚のおこぼれがないと生きていけないし、ただ、おこぼれだけが残っちゃうと、結果的に自然は汚れていく。
神尾
そうです。
柿崎
そのバランサーみたいな、ナマコって。
神尾
そういうの、ちょっと可愛いなって。
柿崎
いい感じに目立たないし。
神尾
目立たない。
柿崎
自然にいると目立たない。
山本
でも、おまえらがいないとって。
神尾
あと、何かこう、愛らしいのって、別にやろうとしているわけじゃない。たまたまなっているだけで、考えていない感じがいい。
山本
きれいにするぞーみたいな感じじゃないですもんね。
神尾
じゃないです。ただ、自分が食べたいものを食べているだけ。
柿崎
そうそう。
神尾
何かその辺の感じが。
山本
分かるー。
神尾
別に掃除する気でやっているわけじゃないですよ。
柿崎
うん。結果、掃除したみたいな。
柿崎
うん。いいですよね。なんか最近、モップ付きのスリッパみたいな感じがする。
山本
確かに似てる。えっ、ニセクロナマコに似てません?あれ黒かったら。
柿崎
確かに。
山本
グッズいいんじゃないですか?
柿崎
ナマコスリッパ。
山本
私、買いますよ、たぶん。
神尾
ああー。
山本
あとナマコをずっと見ていたら、ウンチ、めっちゃきれいなウンチのときないですか?
柿崎
とぐろ?
山本
とぐろになるときないですか?
神尾
ああ、あるある。
山本
あれ、びっくりしません?おまえがやったの?ってなりません?
神尾
ならない。
山本
あれ、そんな?
柿崎
海の中だとウンチが結構デカい。ウンチの輪っかがこう積み重なって。
山本
むしろ魚よりそっちを写真撮るときないですか?
神尾
ある。
山本
ありますよね!
神尾
うん。ダイビングするときに写真撮っている、確かに。
山本
しかもナマコのこと忘れてウンチしか撮らなくないですか?
神尾
ウンチしか撮らない。
山本
そういうところも可愛くないですか?忘れられるという。
柿崎
ナマコのウンチで言うと、砂の塊とはいえ、確かにいろんな形状あって、基本は数珠じゃないですか?
神尾
うんうん。
柿崎
たまに直線。
山本
ありますね。
神尾
あります、あります、あります。
柿崎
たまにすごい飛ばすやつがいますよ。
神尾
飛ぶんですか?
柿崎
飛ぶんです。
山本
ええっ?
柿崎
こう、ピュッてポーンってやるときに、結構遠くまで飛ぶやつがいる(笑)
神尾
マジですか?
山本
可愛い(笑)
柿崎
だから、ウンチパターンも見ている。
山本
ウンチパターン面白いですよね。
柿崎
人によって違うというか。
神尾
ナマコによってね。
山本
その瞬間でも違いますもんね。

山本
今までなかなかこうやってナマコについて話すこと、なかったですよね。
神尾
というか。
山本
初めてですよね。
柿崎
やっぱり、あんまり主役というイメージがないし。
神尾
そうですね。
柿崎
見たら面白いけど、じっくり見てねという機会って、たぶん我々はなかったんじゃないかなと。
神尾
うん。なかなかフォーカスしづらいですもんね。
柿崎
京都水族館でも、チンアナゴの水槽にニセクロナマコが2匹いるとしても、チンアナゴ見てねって言いません?
山本
言いますね。
神尾
言いますね。
柿崎
たとえばマガキガイとかと一緒にお掃除屋さんというグループで紹介することはあっても、なかなかナマコ…。
神尾
単品で。
山本
オンリーで。
柿崎
なかなかないんで。食文化としても珍味とかのレベルだから、なかなか馴染まない。
神尾
もうひと声あげてくれても、うん。
柿崎
そうそうそう。すみだ水族館もそんな感じです。でもお客さんにとって気になる存在ではあるんですよ、これ何ですかって必ず聞かれるんです。
神尾
これ何ですか?って、すごいですね。
山本
ナマコですって言うんですか?
柿崎
ナマコですと。そう答えると、えーナマコなんだみたいな。やっぱりとか。
山本
うんうん。
柿崎
やっぱりって何?みたいな。
神尾
だったら、ナマコですかって聞いてほしい。
柿崎
(笑)そう。
神尾
ナマコの魅力を伝えるって、難しいですよね。ずっと説明してたら、ひかれそうですもん。
柿崎
(笑)まあね。
神尾
飼育スタッフの中でナマコの話になった時も、途中でひかれたもん。
柿崎
ありますよね、もうおなかいっぱいですみたいな。
神尾
その感じを乗り越えて、私の愛するいきもの展に来ていただいた方にも、こういう面白いとこあるんだ、ということを知ってもらいたいと思います。
山本
簡潔に伝えたいですよね、何かひとつでも持ち帰ってほしいですよね。
柿崎
ひとつですよね。
山本
ひとつでいいんですよ。
柿崎
全部ではないんですよね、ひとつなんですよね。
山本
そうなんですよ。
柿崎
なんかナマコいいよね、みたいな。高校生のカップルが来たときに、ここに来るとナマコ見ちゃうんだよね、みたいな。
神尾
僕と山本は、普段の業務はイルカやオットセイたちを担当してるから、突然ナマコの話をするのも不自然なんですけど笑。
一同(笑)
神尾
水族館には、パッと見て、キレイ!とかカワイイ!っていういきものがいるわけじゃないですか。でも、クロナマコとかニセクロナマコって、パッと見でいうと何もない。であるがゆえに、裏にある知識とか情報とかを知ってもらうと、より楽しめるのかなって。
柿崎
ここは触っちゃだめだよねとかって、なんかそういう愛情を持てるようになるんじゃないかなと。水槽を見てても「ナマコじゃん」から、おまえはどこに行くんだみたいな。ちょっと違う感情が生まれるみたいな。今回、僕らが話したようなことが、展示ブースに出るんで、お客さまもちょっと愛情が持てるんじゃないかなと。
神尾
そうですね。
山本
ただ見るだけじゃない、雑味というか。
柿崎
ちょっと見る視点が変わるんじゃないかなと。
神尾
実は偉いんだな、っていう感じまでいってもらえるとありがたいですよね。
柿崎
おまえら、偉いなと。
神尾
やる気ないけど、ちゃんと仕事してるんだっていう感じが分かっていただけると嬉しいなと思います。
柿崎
消灯しても、電気消えても動いてますからね。
山本
そうですね(笑)
柿崎
夜中でも働いてるよと。すごいねと。
神尾
すごいねと(笑)
山本
みんなが寝てる間にね。
柿崎
そうそう、そうそう。

山本
楽しかったです。1時間、あっと言う間でした。
柿崎
意外とこの話で酒飲めそうですね。
神尾
いけますね。
山本
(笑)まだまだいけそうですね。
神尾
いけると思う。この感じでいけますね。
柿崎
ナマコをつまみにって、どっちの意味か分かんないですけど(笑)
山本
(笑)ナマコをつまみに。
神尾
どっちの意味でもいけそうですよね。
柿崎
ナマコをね、話のネタに、肴にするのか分かんないですけど。
山本
初めてです、こんな、ナマコについて1時間も雑談をしたのが。
神尾
でもね…、言っていい?
山本
はい。
神尾
楽しい。
一同(笑)
柿崎
普段見る分野もちょっと違ってたり。
神尾
そうなんですよね。
柿崎
お互いに会話すると、見方がちょっと違うなとか出てくるんですよ。そこまで見てなかったよとか、そういう視点も提供できるっていうのがすごいなと思いますよね。
神尾
いろいろ話してる中でも、あ、そうなんだ…、へえーっていうところがあって、もう一歩、ナマコ道を極めようかなっていう感じになりますね。
山本
うん。
柿崎
あらためて、もうちょっと考えようとか、いろいろ生まれますよね。
神尾
そうですね、確かに。
山本
感謝の気持ちが生まれます。
柿崎
感謝はする。今日、太ってるね、とか。
山本
頑張ったのねって。(笑)
柿崎
ナマコに何が合いますかね。
神尾
酒ですか?
柿崎
酒、種類。
神尾
いやー、泡盛じゃないですか?
山本
え、泡盛って言いました?
柿崎
僕はシュワシュワのほうがいいです。
神尾
最近ね、でも、シュワシュワのやつはね、あんまりあれですよ。ちょっと控えようかなと思って、最近ハイボールに…。なんの話してるんですか?
山本
シュワシュワじゃないですか。
一同(笑)
神尾
じゃ、今度、ナマコで一杯やりましょう。
柿崎
そうですね。
山本
はい、よろしくお願いします。




