コラム

2025.07.01

クラゲワンダー研究部員の観察日誌
/キタユウレイクラゲ編

  • キタユウレイクラゲ
  • jellyfish
  • クラゲ

2020年に誕生した「クラゲワンダー」。ここでは約30種類のクラゲたちと出会うことができます。
多種多様な特徴を持つクラゲたち、それぞれのクラゲの見どころを知ることで、お気に入りのクラゲが見つかるかもしれません。

雄々しき「たてがみ」持つクラゲ

「ライオンのたてがみ」と聞くと、みなさまが思い浮かべるのは百獣の王のことだと思いますが、クラゲを飼育するわたしが思い浮かべるのはあのクラゲです。‌



キタユウレイクラゲは傘の大きさが約40~70㎝になる大型のクラゲです。近縁種のユウレイクラゲの傘が白いのに対してキタユウレイクラゲは茶褐色や、やや赤みを帯びた傘をしているのも特徴です。‌

英名で「lion’s mane jellyfish」(ライオンのたてがみクラゲ)、というように多数のしなやかな触手を携え、力強く拍動する姿はまさしくライオンのたてがみにふさわしいかもしれません。‌

【京都水族館で育ったキタユウレイクラゲ】


ふわふわとなびくボリュームのある触手と口腕(こうわん)には思わず触れたくなってしまいますが、例外なくキタユウレイクラゲにも毒がありますので、おさわりは厳禁です。‌

その姿、世界最大級

意外にも世界最大のクラゲの記録を持つのが、キタユウレイクラゲ。その大きさは傘の直径がなんと2.3m!世界最大級のクラゲとしてギネス世界記録に認定されています。また触手の長さは約37mで、どのくらい長いかと言うと、世界最大の生物と言われているシロナガスクジラの最大体長が33mですのでそれよりも約4mも長い触手ということになります。‌

ただ、飼育下で同じ大きさを再現するのは不可能に近いでしょう。キタユウレイクラゲはクラゲを食べるクラゲ食のクラゲ。大きく成長させるには大量のごはん用ミズクラゲが必要になるため、他の水槽がすべて空っぽになってしまうかもしれません…。‌

京都水族館で飼育しているキタユウレイクラゲは今まで最大で直径15㎝ほどです。世界最大のおばけクラゲは遠いですが、大きく育てられるようにがんばっています。‌



写真は2019年に北海道で採集された野生のキタユウレイクラゲです。傘の直径は20㎝ほどあり、傘に厚みもあり大きいことが分かります。口腕に付いている小さなつぶつぶはすべて卵で、1個体のキタユウレイクラゲは生涯に約2000万個の卵を産むともいわれています。このキタユウレイクラゲから採取した卵がポリプ(受精卵が幼生を経て岩などに着底したイソギンチャク状の姿)になったものを今でも大切に育てて赤ちゃんクラゲを得ています。‌

あの小説のモデルに

推理小説好きの中にはピンときた方もいらっしゃるかもしれません。シャーロック・ホームズの事件簿の『ライオンのたてがみ』という短編集に登場することで有名になりました。(サイアネアクラゲとして登場しますがキタユウレイクラゲのことで、学名のCyaneaに由来しています。)ある朝ホームズは泳ごうと海岸へ向かうと、先に海岸へ行ったマクファーソン青年がよろめき倒れ、「ライオンのたてがみ…」という言葉を残し亡くなってしまうのです。真相が気になる方がぜひ『ライオンのたてがみ』を読んでみてください。‌



さて、世界最大の称号を持つキタユウレイクラゲですが、生まれたばかりのエフィラからすでにその風格を漂わせています。‌



ミズクラゲやアカクラゲのエフィラの大きさが約2~3㎜なのに対して、キタユウレイクラゲのエフィラはなんと5㎜ほどあり存在感を放っています。京都クラゲ研究部では毎日15時ごろからその日に生まれた赤ちゃんクラゲを展示しているので運がよければキタユウレイクラゲの赤ちゃんも見られるかもしれません。‌

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※出典:ギネス世界記録.ギネスワールドレコーズ公式サイト”Largest jellyfish”. https://www.guinnessworldrecords.jp/world-records/70599-largest-jellyfish

 

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