コラム

2025.06.06

クラゲワンダー研究部員の観察日誌
/ハナガサクラゲ編

  • ハナガサクラゲ
  • jellyfish
  • クラゲ

2020年に誕生した「クラゲワンダー」。ここでは約30種類のクラゲたちと出会うことができます。
多種多様な特徴を持つクラゲたち、それぞれのクラゲの見どころを知ることで、お気に入りのクラゲが見つかるかもしれません。

やっと出会えた!ハナガサクラゲ

傘に走る黒い稲妻のような模様に触手の蛍光色がエキセントリックな印象を放つハナガサクラゲ。日本海での乗船採集で3年ぶりにハナガサクラゲと出会うことができました。‌



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多くのクラゲたちは潮の流れに乗りながら海を漂っているので、天候や満潮のタイミングなどによって漁港や海岸でも簡単に見つけることができます。‌

しかしハナガサクラゲの場合は違います。ハナガサクラゲは底生のクラゲで通常海底の岩や海藻に掴まりじっと過ごしています。‌



そのため、陸に近い場所や水面からは確認できません。時折漁師さんが使う定置網や底引き網の中に混入するので、水揚げされた個体を採集しています。‌

動かない?…と思いきや

水槽に展示されているハナガサクラゲはほとんど動くことはありません。‌



というのも、ハナガサクラゲは夜行性のクラゲで夜間に海底から浮遊し小型の魚類を捕食します。京都水族館でも深夜、宿直の見回りをする頃には元気に泳ぎ回っていることが多いので、見慣れないアクティブなハナガサクラゲについ「ギョッ!」としてしまいます。‌

【ハナガサクラゲが泳ぐようす】



通常クラゲは傘の縁に眼点(がんてん)という光を感じる目のような器官を持っており、朝か夜かを判断することができます。しかし、ハナガサクラゲに眼点は確認されておらず、どのように明るさを判断し、夜に活動しているかはよく分かっていません。‌

漁師のみなさんの宿敵!

ハナガサクラゲと聞くといつも思い出してしまうことがあります。それは漁業を営むとあるお客さまのこと。もう何年も前の話ですが水槽にハナガサクラゲを展示していたところ、「この!憎きハナガサクラゲ!」と声をかけられました。事情を伺うと、網にかかったハナガサクラゲが魚を傷つけないように海に逃がす際に刺されてとても痛い、とのことでした。それもそのはず、ハナガサクラゲは小型の魚類を捕えて食べるクラゲ。泳いでいる魚を仕留められるほど強い刺胞(しほう)毒を持っているので人間が刺されても痛みを感じます。‌

そんな恨みを買ってしまうハナガサクラゲですが、クラゲ界ではトップクラスの美しさを誇ります。‌



ハナガサクラゲの展示は期間限定ではありますが、不思議で美しいクラゲに癒されてみるのはいかがでしょうか?‌

※いきものの状況によっては展示を終了する場合がございます。

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