コラム
クラゲワンダー研究部員の観察日誌/イオリクラゲ編
- いきもの紹介
- 京都クラゲ研究部

2020年に誕生した「クラゲワンダー」。ここでは約30種類のクラゲたちと出会うことができます。
多種多様な特徴を持つクラゲたち。それぞれの見どころを知ることで、お気に入りのクラゲが見つかるかもしれません。
北陸生まれのイオリクラゲ
釣り鐘型の透明な傘と、その内側にあるひときわ目を引く赤色の生殖巣(せいしょくそう)が特徴的なイオリクラゲ。「いおり」と聞くと建築物や人名をイメージしますが、名前の由来となったのは地名です。
石川県七尾市にある庵(いおり)町の定置網で発見されたことから名づけられました。京都水族館では、クラゲワンダーがオープンする1年前の2019年から繁殖と飼育に取り組んでいるクラゲです。
大きくなあれ!
現在イオリクラゲは円形の小型水槽で飼育していますが、かつては小さな冷蔵庫の中で育てており、なかなかお客さまに見ていただくことが叶いませんでした。どうしてイオリクラゲは冷蔵庫の中にいたのでしょうか。
それはイオリクラゲの体が小さかったためです。京都水族館ではイオリクラゲの繁殖に挑戦するのは初めてのことでした。最初の頃は大きく育てることが難しく、本来であれば3センチほどになるところが、1センチにも満たない大きさで成長が止まってしまいました。京都クラゲ研究部にあるほかのクラゲを飼育している円形の水槽はイオリクラゲにとっては少し広く、ごはんをうまく捕まえられなかったり、水流が強すぎて体調を崩してしまったりするのを防ぐために水流のないシャーレに入れ、水温を低く保てる冷蔵庫の中で育てていました。
最初は生まれたての赤ちゃんクラゲから大人になるまで育てることも大変で、「イオリクラゲにとって今の水温は高すぎるのかな?それとも低すぎるのかな?」、「ごはんの種類がイオリクラゲに合っていないのかな?」と、毎日育て方を見極めながら、少しずつ長生きできるようになっていきました。
ギヤマンクラゲにあげているホワイトシュリンプを細かく刻んだものや、パシフィックシーネットルやパープルストライプトジェリーの赤ちゃんにあげているアミエビのミンチなど色々な種類のごはんを試して、イオリクラゲにぴったりのごはんを探していました。
待望のお引越し
「もしかしたら大きくなるかも?」イオリクラゲに変化の兆しが見えました。担当の飼育スタッフの試行錯誤のかいもあり、イオリクラゲがいつもより一回り大きく育っているような気がします。「これならいける!」と、クラゲチームのみんなが同じ気持ちでイオリクラゲを見つめています。ついに冷蔵庫を旅立ち、他のクラゲたちと同じ円形の水槽に引っ越す日がやってきました。
のびのびと大きな水槽で漂うイオリクラゲたちに思わず笑顔がこぼれます。こうしてクラゲたちを観察しながら日々クラゲと向き合うのも京都クラゲ研究部にいる飼育スタッフの大切な役割です。
いちご?それとも梅干し?
さて、イオリクラゲを見たときにみなさんは何かに似ていると思いませんでしたか?これは飼育スタッフのなかでは意見が2つに分かれます。「いちご大福に似ている!」という声と、「梅干しおにぎりに似ている!」という声があります。いちご大福と梅干しおにぎりはどちらも白いものに包まれていて真ん中に赤色の丸いシンボル。どちらの意見も分かるような気がします。
「こんなことを考えているのはうちの飼育スタッフだけかな?」と思いきや、なんとイオリクラゲは地元の漁師さんから「梅干し」とよばれることもあるそうです。骨のないクラゲの傘はゼラチン質でとても脆く、水中でしかその形を保つことができません。そのため網にかかり水から揚げられたイオリクラゲの傘は小さく縮こまり、中心の赤い生殖巣だけが残るのでその姿が梅干しに例えられたようです。
みなさんの目にはイオリクラゲはどちらに見えるでしょうか?ちなみにわたしはいちご大福派です!ぜひ実際にイオリクラゲを見て感想を教えてくださいね。
[展示飼育チーム 六浦]
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