コラム
クラゲワンダー研究部員の観察日誌/カミクラゲ編
- いきもの紹介

2020年に誕生した「クラゲワンダー」。ここでは約30種類のクラゲたちと出会うことができます。
多種多様な特徴を持つクラゲたち。それぞれの見どころを知ることで、お気に入りのクラゲが見つかるかもしれません。
春だ!クラゲだ!
京都水族館では、主に「京都クラゲ研究部」で繁殖したクラゲたちを展示していますが、海でめずらしいクラゲを見つけたときには、持ち帰って展示することもあります。とくに水温が上がり始める春の時期は、海の中もたくさんのクラゲたちが現れ始めます。
毎年この季節に現れるのを密かに楽しみにしているのが「カミクラゲ」です。
カミクラゲは、春になると東北から九州沿岸に現れる日本固有のクラゲで、「春を告げるクラゲ」ともいわれています。わたしたち飼育スタッフのなかでも、春の採集では「カミクラゲいるかなあ?」とそわそわしてしまうほど注目度の高いクラゲです!
▶ふわふわ漂うカミクラゲ
カミクラゲの「カミ」は神?紙?髪?噛み?
カミクラゲの名前の由来はなんでしょうか?わたしが初めてカミクラゲを見たときは、「ああ~、なるほど。こんなに神々しい見た目をしているから“神クラゲ”っていうのか~。」と思っていましたが、残念、不正解でした。
カミクラゲの傘の縁からは「髪の毛のような」ふさふさした長い触手が伸び、なびかせながら水中を漂います。そうです!カミクラゲの「カミ」は“髪の毛”に由来しています。傘の形が似ているジュズクラゲやサルシアクラゲと比べてみると、触手がとても多いことが分かりますね。(ジュズクラゲ・サルシアクラゲは触手が4本)
触手の根元には赤色の小さな点が多数並んでいます。これは眼点(がんてん)という器官で、クラゲにとっては目の代わりになるようなものです。光を感じることができ、昼夜の判断をしたり、プランクトンの集まる明るい方へ移動したりするのに役立っていますが、カミクラゲの眼点はとても数が多く、密集しているのが特徴です。他のクラゲを例に挙げると、ミズクラゲには8個、サルシアクラゲには4個の眼点があり、それぞれ傘の縁に等間隔に分布しています。
どうして春の海でしか会えないの?
カミクラゲはわたしたちクラゲの飼育スタッフにとって身近でありながら、ちょっぴり遠い存在でもあります。というのも、「春の」「海で」しか出会うことができないからです。今や日本の多くの水族館でクラゲの繁殖に取り組まれていることはご存じの方も多いと思いますが、そんな水族館大国・日本の技術をもってしても、彼らの繁殖方法は解明されていないのです。
多くのクラゲたちは、体外で受精をしたのち、「ポリプ」という小さなイソギンチャク状の姿になって着底します。カミクラゲも例外ではないと考えられていますが、受精卵を採取しても、そこからポリプに変態することがなかなか難しいようです。
京都水族館でも、カミクラゲを採集できた年には卵を採取しポリプの獲得を目指していますが、今のところ成功には至っていません。人間の手で繁殖させようとしてもなかなかうまくいかないのに、海では毎年きちんとカミクラゲが現れるので、やっぱり海は偉大でミステリアスだなあと感じます。
ちなみにカミクラゲは体のどこで卵をつくっているか分かりますか?
透明な傘を透かして見てみると、くるくると渦巻いた器官があります。
ここがカミクラゲの生殖巣で、成熟すると卵がつくられます。
成熟していない若いカミクラゲはこの渦がなく、おとなへと成長するにつれてくるくるとコイル状に渦巻いていくのも観察していて楽しい部分です。
成熟したカミクラゲの生殖巣
未成熟の生殖巣
とっても神秘的なカミクラゲですが、わたしのお気に入りは、ごはんタイムに見せるおちゃめな一面です。傘の中央に伸びる口を器用に動かし、触手で捕まえたプランクトンを集めるようすは、象が長い鼻を使って食べものを探す姿に似ている気がします。
▶ごはんをもぐもぐカミクラゲ
カミクラゲは、現在「京都クラゲ研究部」にて展示中です。いきものの体調によっては早期に展示を終了してしまう場合もありますので、気になる方はぜひお早めに会いに来てくださいね。
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